D2C企業の「ブランディング」の特徴
- 2020.12.07
- 関 洋祐
D2Cにとってブランディングとは、どんな役割・目的で何をすることでしょうか?
旧来型のビジネスとしてナショナルブランドとの比較で検討していきたいと思います。
D2Cにとってブランディングとは、どんな役割・目的で何をすることでしょうか?
旧来型のビジネスとしてナショナルブランドとの比較で検討してみたいと思います。
ブランディングの目的
ブランディングというと、通常
「ブランディングとは」という定義の話や
「どのようにブランディングするか」という方法論の話が取り上げられることが多いのですが、
「なぜブランディングが必要か」という目的のところが語られることがあまりありません。
試しに「ブランディング 目的」と検索してみてください。
タイトルに「ブランディングの目的は?」と書かれているような記事でも、本文をよく読むと実はその答えが明確に書かれていないことが多いのです。
ナショナルブランドとの対比でブランディングの目的を語るならば、以下のような違いがあると考えています。
ナショナルブランドにおける「ブランディング」は認知拡大を目標として実施されていることが多いです。
一方D2Cでは、より経営目線が入るからという背景もありますが、事業成長に直結する施策の一つとしてマーケティングと並列で認識されていることが多いです。
あるいは売上拡大、売上の安定など、売上(利益)と直結する施策として考えられています。
ブランディングの定義
目的が売上や事業成長という経営目線に置かれていることを踏まえて、「ブランディングとは」に対する考え方をまたナショナルブランドと比較してみます。
ナショナルブランドにおけるブランディングでは、「想起」という言葉がよく使われますが、認知拡大という目的のために「そのブランドがどういうイメージをもたれるか」を作り上げていきます。
このことを
世間の「イメージ」を作る
と定義してみました。
一方でD2Cのブランディングは、Direct to Consumerという名が示すように顧客と直接繋がることから
顧客の「体験」を作る
ことをブランディングの定義としてみたいと思います。
D2Cはビジネスのサイズが比較的小さいニッチ市場から入っていくことが多く(ここのところはまた別の記事で言及していきたいと思います)、世間一般のイメージを作ることが必ずしも事業成長に繋がりません。
それよりも、特定の顧客に直接提供できる体験をコントロールし、その顧客にとって価値あるものとすること自体がブランディングになります。
ブランディングの施策
では具体的にどのような施策でブランディングを行うのかの比較をしてみます。
ナショナルブランドは、世間のイメージを作るブランディングなので、施策の手法としてよく取られるのはやはりTVCMを中心としたマス媒体でのキャンペーンです。
それに対してD2Cでは顧客の体験を作る施策なので大きく2つ
●プロダクト
●コミュニケーション
の施策でブランドを作っていきます。
プロダクトが作る体験
D2Cのプロダクトは主にECで販売されることが多く、小売店の棚で目立ったり機能訴求したりする必要がありません。
したがって、ユーザーの生活の中に組み込まれる想定で、シンプルで飽きのこない素敵なデザインのものが作られることが多いです。
生活に溶け込むデザインというところが1つの例ですが、もちろんそれだけではありません。
注文してから届くまで、届いてから使うまで、そして使い続ける過程ずっと、細かく細かく設計された良質な顧客体験が、D2Cのブランドを形作っています。
コミュニケーションが作る体験
もう一つ、D2Cならではの特徴的なブランディング施策はコミュニケーションです。
ナショナルブランドのブランディングでも「ブランドコミュニケーション」という言葉は使われますが、D2Cのコミュニケーションは「ダイレクト」であることが最大の特徴です。
商品・サービスの提供がダイレクトであることが注目されやすいですが、顧客とのコミュニケーションがダイレクトであることからも、ナショナルブランドとは全く違う体験を提供できる理由となっています。
商品を手にしたユーザーからのダイレクトなフィードバックを大切にしているため、経営陣も定期的にユーザーインタビューを行っているD2Cが多いです。
ユーザーからのフィードバックを商品の改良や新商品の開発につなげており、まさにユーザーとブランドを共創している関係を築いています。
ユーザー同士のコミュニティを構築しているD2Cもあり、他のユーザーとのコミュニケーションもD2Cの重要な体験の一部となっています。
まとめ
ここまでの内容をまとめると、以下の表のようになります。
D2Cがブランディングを考える際は、まずは基本として、プロダクトとコミュニケーションによって顧客の「体験」を徹底的に作り込むことを意識するのが良いでしょう。